ChatGPTは便利なツールですが、入力した情報は「自分の手を離れる」という危機意識は常に持つ必要があります。
なぜなら、入力された情報は送信され、第3者のサーバーに保存され、学習に使われ、未来に予期せぬ形で利用される可能性があるためです。
この記事では、まず「入力してはいけない8つの情報」を明確にし、その後、AIとの付き合い方における“見えにくいリスク”について解説します。
1. 個人情報や機密情報
ChatGPTに個人情報を入力することは、情報漏洩だけでなく、情報が自分の管理下から離れるという重大なリスクを伴います。
たとえAIが「記憶しない」とされていても、技術的にはログが残る可能性があり、完全な消去は保証されません。
【入力してはいけない例】
種類 | 具体的な情報例 |
---|---|
個人情報 | 氏名、住所、電話番号、メールアドレス |
金融情報 | クレジットカード番号、口座情報 |
業務機密 | 顧客データ、社内資料、契約書内容 |
2.未公開情報・最先端情報・公開前の製品情報
企業や研究機関が保有する未公開情報や、開発中の製品・技術に関する情報は、ChatGPTなどのAIに入力すべきではありません。
これらの情報は、以下のような理由で特に慎重な取り扱いが求められます:
- 機密性が高く、外部漏洩による損害が大きい
- 契約や法令で守秘義務が課されている場合がある
- AIの学習データとして再利用される可能性がある
- 情報の流通経路が不透明で、将来的に予期せぬ形で露出する可能性がある
入力してはいけない未公開情報の例:
種類 | 具体例 |
---|---|
製品開発情報 | 発売前の仕様、設計図、試作段階の技術 |
研究成果・技術情報 | 論文未発表のデータ、特許出願前の技術 |
ビジネス戦略・社内計画 | 新規事業の構想、マーケティング戦略、提携内容 |
AIは便利なアイデア出しのツールとして使える場面もありますが、未公開情報を扱う際は、社内の安全な環境でのみ使用することが原則です。
3. 医療・法律・税務などの専門判断
ChatGPTは膨大な情報をもとに回答しますが、医療診断や法律相談、税務申告などの専門的な判断を任せるのは危険です。
AIは資格を持たず、責任も負いません。誤った情報に基づいて行動すると、健康被害や法的トラブルにつながる可能性があります。また、これら診断結果などは「要配慮個人情報」に該当し、特に扱いに注意が必要な個人情報です。
AIに任せてはいけない領域:
- 医療:健康状態、症状の診断、薬の選定
- 法律:契約書の解釈、訴訟対応
- 税務:申告内容の判断、節税アドバイス
専門的な判断は、必ず人間の専門家に委ねるべきです。
4. 緊急時の情報
災害、事故、急病などの緊急時にAIを頼るのは危険です。ChatGPTはリアルタイムの状況を把握できず、過去の一般的な情報に基づいて回答するため、現場に即した判断はできません。
また、AIは「責任を取る存在」ではありません。誤った指示を受けて行動しても、誰もその結果に責任を持ちません。
緊急時こそ、人間の判断力と責任感が必要です。AIはあくまで補助的な役割にとどめましょう。
5. 著作権に関わる内容
ChatGPTに「○○の歌詞を使って」「有名な小説の一節を引用して」などと依頼すると、著作権侵害につながる可能性があります。
AIは既存の作品を学習しているため、意図せず著作物を模倣することがあります。問題は、生成されたコンテンツが「誰のものか」が曖昧になることです。
注意すべき生成依頼の例:
- 有名な歌詞の引用
- 映画や小説のセリフの使用
- 他人のブログや記事の模倣
商用利用を考えている場合は特に注意が必要です。
6. 差別的・攻撃的な内容
差別的、暴力的、ヘイトスピーチなどの内容をAIに入力すると、それに応じた不適切な回答が生成される可能性があります。
AIは文脈を完全に理解できないため、悪意のある内容がそのまま拡散されることもあります。一度ネットに出た情報は、完全に消すことが難しく、未来に自分自身を傷つける可能性もあります。
7. 子どもに関する情報
未成年者に関する情報、特に画像、健康、教育、家庭環境などのセンシティブな内容は、AIに入力すべきではありません。
子どもの情報は、将来的に本人のプライバシーや安全に関わる重大なリスクを含んでいます。
たとえ今は問題がなくても、数年後にその情報が予期せぬ形で使われることもあります。子どもの情報は、特に慎重に扱うべきです。
8. 感情的な相談
「つらい」「誰かに話を聞いてほしい」といった感情的な相談に対して、AIは共感を模倣することはできますが、本当の理解や支えにはなりません。
AIは感情を持たず、あくまで言葉のパターンで応答しているだけです。また、感情的な内容は、AIの学習データとして使われる可能性もあります。
自分の心の内を、知らない誰かに見られるかもしれないというリスクを考えると、信頼できる人間に相談する方が安心です。
また、AIのほうが正しいと信じ込み、親族のアドバイスを聞かなくなったというケースもあり、この点も注意すべきポイントかもしれません。
AIの回答を過信することの危険性
ChatGPTの回答は、あくまで参考情報です。情報源が不明確で、誤情報や偏ったデータに基づいていることもあります。
「AIが言っているから正しい」と思い込むと、誤った意思決定につながります。
逆説的に言えば、AIの回答が“正しく見える”ほど、疑ってかかるべきなのです。AIは“補助ツール”であり、“判断者”ではありません。
利用規約や倫理観の軽視
AIサービスには利用規約があり、倫理的なガイドラインも存在します。これらを無視した使い方は、サービスの停止や法的責任だけでなく、未来の自分の信用や評価を傷つける可能性もあります。
AIは社会に影響を与える存在です。だからこそ、使う側にも責任があります。「今だけ良ければいい」ではなく、「未来にどう影響するか」を考えながら使うことが、AIとの健全な関係を築く第一歩です。
規約はしっかりと目を通し、確認しましょう。
まとめ
ChatGPTは強力なツールですが、入力した情報が「自分の手を離れる」ことへの危機意識が欠かせません。
前半では、入力すべきでない具体的な情報を明示し、後半ではAIとの付き合い方における見えにくいリスクを整理しました。
これらを意識することで、よりAIを安全に活用できるのではないでしょうか。