近年、企業での契約書の電子化への検討が増えています。従来の紙文書から電子形式への移行は、効率性やコスト削減、環境負荷の軽減などのメリットがありますが、法的有効性やセキュリティ上の懸念も同様に重要です。この記事では、電子契約の導入に関する重要なポイントをお伝えします。
簡単にわかる!契約書の電子化とは
契約書の電子化とは、従来の紙文書から電子形式への移行を指します。契約書を電子化することによって契約プロセスを効率化し、コスト削減や環境負荷の軽減を実現することが可能です。ただし、電子契約の導入には法的な要件があるため、電子署名法や電子取引法などの法律に準拠する必要があります。
電子契約書を採用するメリット
では、まず電子契約書を採用することで生まれるメリットを紹介します。
- 効率性の向上:紙の契約書よりも簡単に作成、送信、署名、管理ができるため、取引のプロセスが効率化され、取引完了までの時間が短縮されます。
- コスト削減:単純に紙や印刷物のコストがされます。また、それだけではなく、郵送や保管などの間接的なコストも削減できますし、契約書の作成や処理にかかる人件費を低減することが可能です。
- 環境負荷の軽減:紙の使用量や印刷物の廃棄が削減されれば、環境への負荷が軽減されます。これは企業のイメージアップにもつながります。
- 管理の容易化:電子契約書はデジタル形式で保存されるため、検索や管理が容易です。契約の状況や履行状況をリアルタイムで把握し、必要な情報に迅速にアクセスできます。
電子契約の導入に必要な法的要件
電子契約の導入には、法的な要件があります。法的要件に関しては以下を参考にしてください。
- 電子署名法の遵守:電子署名が法的に有効であるためには、その署名が一定の要件を満たしている必要があります。
- 書面要件の遵守:多くの国や地域では、契約書は書面であることが要求されます。電子契約が書面要件を満たすためには、電子形式が法的に認められていることが必要です。
- 証拠能力の確保:電子契約が法的に有効であるためには、契約の締結過程や内容の証拠が保全されることが重要です。このため、信頼性の高い電子署名やタイムスタンプ、デジタルハッシュなどの技術の使用が必要です。
- プライバシー保護とデータセキュリティ:電子契約に関連する個人情報や機密情報の取り扱いには、適切なプライバシー保護とデータセキュリティが求められます。GDPRやHIPAAなどの規制に準拠する必要があります。
電子契約書を実現させるためには、いくつかの法律についてもチェックする必要がありますので、以下で簡単にまとめます。
電子署名法
電子署名法とは、電子契約や電子文書における電子署名の法的地位や効力を定めた法律です。この法律は、紙の契約書に使用される物理的な署名と同じように、電子形式で行われた署名が法的に有効であることを認めており、次の要件や原則に基づいています。
- 署名者の識別:電子署名では、個人識別情報などで署名者を明確に識別する必要があります。
- 完全性の保証:電子署名では、文書の内容が後から改ざんされていないことを保証する必要があります。
- 証拠能力の確保:電子署名が文書の締結過程や内容の証拠を保全することが求められます。タイムスタンプや認証局による署名の検証などが有効です。
電子取引法
電子取引法とは、電子商取引に関する法的規定を定めた法律です。電子文書や電子署名を使用した取引における法的な基準を確立し、デジタル環境におけるビジネスの信頼性と安全性を確保することが主な目的になります。電子取引法の重要なポイントは以下の通りです。
- 契約の電子化:電子取引法では、契約書や取引における書面の電子化を認めています。従来の書面契約と同様に、電子契約も法的な効力を持ちます。
- 電子署名の使用:電子取引法では、電子署名の法的有効性を認めています。
- プライバシーとセキュリティの保護:電子取引法には、個人情報や機密情報の保護に関する規定も含まれています。個人情報の取り扱いやデータのセキュリティに関する基準を定め、消費者のプライバシーを保護します。
- 消費者保護:消費者が電子商取引において適切な情報を得る権利を保障します。消費者への情報提供義務や不当な取引行為の禁止などが含まれます。
なお、ここで紹介した電子契約に関する法律は、日本についてのものです。他の国でも当てはまるとは限りませんのでご注意ください。
電子契約を導入する際の注意点
電子契約の法的有効性と証拠能力
まず、電子契約の法的有効性についてです。多くの国や地域では電子署名法や電子取引法などの法律が存在し、電子契約が紙文書と同じように法的効力を持つことが規定されています。しかし、法的有効性を確保するためには、適切な電子署名や認証手続きが必要です。
また、電子契約が証拠能力を持つかどうかも重要です。契約締結時の証拠や内容の完全性を保証するために、信頼性の高い電子署名やタイムスタンプ、デジタルハッシュなどの技術が活用されます。
データの保護と漏洩リスク
次に、電子契約におけるデータの保護と漏洩リスクについて考える必要があります。クラウド上で契約書を管理する場合は、どうしてもデータの漏洩や不正アクセスのリスクが存在します。そのため、データの暗号化、アクセス制御、監視、そしてセキュリティポリシーの遵守が重要です。
外部サービスプロバイダーを利用する場合は、サードパーティのセキュリティ対策や信頼性も考慮する必要があります。セキュリティ対策やリスク管理の徹底を通じて、データの保護と機密性を確保することが不可欠です。
適切な管理と監査
最後に、電子契約の適切な管理と監査体制の確立が重要です。契約書の保存、更新、アクセス制御などの管理プロセスを明確に定義し、適切なセキュリティ対策を実施することが必要です。
電子契約書を実現するためのおすすめサービス
ここまでの流れを踏まえて、電子契約書を実現するためのおすすめサービスを厳選して紹介します。これから電子契約書を導入しようとしている方は、前向きにご検討ください。
※これらの製品情報の閲覧には「DXPOオンライン会員登録」が必要です。
(株)マネーフォワード
マネーフォワード クラウド契約
作成から管理まで、一連の契約業務をワンストップでサポート!
法務相談の受付、審査経緯の記録、ワークフローによる社内申請・承認、電子契約や紙による締結、そして保管後の検索・再利用まで、一連の契約業務をひとつのプラットフォーム上で実現します。
GVA TECH(株)
全社を支える法務OS「OLGA」
契約データを一元管理し、法務と事業を一体化する
全社を支える法務OS「OLGA」は法務部が抱える契約業務フローをカバーします。取引先と契約内容を確定させるまでの審査依頼から締結後契約管理までを課題に合わせてご提供します。
(株)ミロク情報サービス
MJS e-ドキュメントCloud
取引文書や契約書の電子化を実現するクラウドサービス
「MJS e-ドキュメントCloud」は電子帳簿保存法に対応した証憑の電子保管をする「キャビネット」と契約を電子化する「サイン」の二つを提供するクラウドサービスです。
まとめ
電子契約の導入は、効率性やコスト削減などのメリットが大きい一方で、法的有効性やセキュリティ上の懸念も同様に重要です。これから電子契約を導入しようとしている方は、これらの懸念を十分に理解し、適切な対策を講じてください。そうすることで、安全かつ効果的な電子契約システムの導入を推進することができます。なお、電子契約を導入する際に稟議書が必要な場合は以下の記事を参考にしてください。