稟議書を提出して承認を得ることで、経費の支出や新規プロジェクトの開始など、さまざまなことを実行することができます。組織内での大きな意思決定を行うための不可欠なツールと言えるでしょう。
しかし、稟議書はただ漠然と書けば良いというものではありません。ある程度、書く時のルールがあります。本記事では稟議書のテンプレートや一般的な書き方はもちろん、稟議書を書くメリットやデメリット、稟議書を通すコツについても紹介します。
稟議書は誰が誰に向けて書くもの?
一般的に稟議書は企業や組織の中での上層部や決定権を持つ管理者に対して提出するものです。稟議書を出す側はプロジェクトマネージャーや部署の責任者、あるいは関連する業務やプロセスに責任を持つ従業員であり、「誰が出しても良いもの」とされています。
稟議書を提出する相手は?
一般的に稟議書を提出する相手は直属の上司です。提出先を間違えてしまうと、通る稟議書も通らなくなってしまいますのでお気をつけください。誰に稟議書を提出するべきかわからない場合も、相談する相手は直属の上司であるべきでしょう。
稟議書で扱う内容
扱う内容は以下のようなものが多いです。
- 新規プロジェクトの提案: 新しい製品やサービスの開発、市場への新規参入など。
- 大規模な資産の取得: 重要な機器やテクノロジーの導入、不動産の取得など。
- 組織改革や大規模な変更: 部署の再編成、業務プロセスの変更など。
- 予算の確保や増額の要求: プロジェクトや業務に必要な追加の資金を求める場合。
ただし、稟議書で扱う内容はとくに決まっているわけではありません。企業や組織の上層部や決定権を持つ管理者の承認が得たい時に使われるものと解釈しておけば良いでしょう。
稟議書テンプレート
稟議書に決まった書き方はありません。しかし、押さえておいたほうが良い情報はあるので、ここでテンプレートとして紹介します。稟議書には以下の内容を盛り込むべきです。
- 決済欄:稟議が最終的に承認されたか却下されたかを表す欄
- 稟議番号:管理者が稟議書を管理しやすくするためのもの
- 受付日:稟議書が受け付けられた日付
- 決裁日:稟議の判断がされた日付
- 提案日:稟議書が提出された日付
- 起案部門:稟議書を提出した部署の名前
- 稟議提出責任者:稟議書の責任者の名前。押印も行う
- 起案者:稟議をした人の名前。押印も行う
- 件名: 提案内容を簡潔に表すタイトルを設定
- 目的・概要:提案内容や目的を簡潔にまとめる
- 実施期日:提案内容を行う予定日
- 購入先・発注先:取引相手の名前を記述
- 発注金額:予算を明記
- 費用発生日:取引先に支払う予定日
- 支払い方法:取引先への支払い方法を明記
- 添付資料:別途で添付資料があれば、どんな資料があるのかここに記入
- 役員および関係部門意見:該当者の意見を書く箇所
このように、稟議書を出す際には詳細な情報を盛り込むことが重要です。内容に説得力があるのはもちろんですが、このように押さえるべき箇所を押さえた稟議書のほうが、上層部からの承認を得やすくなります。なお、押印をしやすいように押印するための欄もあらかじめ作っておきましょう。詳しくは下のテンプレートをご覧ください。
稟議書のテンプレート
こちらが、先ほど紹介した「押さえるべきポイント」を盛り込んだ稟議書のテンプレートです。Wordで作成したもので、それぞれの項目の幅は必要に応じて大きくすると使いやすいでしょう。このテンプレートはこちらから無料でダウンロードできますので、ご自由にお使いください。
また、上記の内容以外に稟議を通すために必要と思われるものがあれば、追加してください。大事なのは稟議書の形式ではなく、稟議を通すことです。稟議書を書く際にある程度の形式にこだわるのは、稟議を通しやすくするためだと解釈してください。
稟議書を書く際に大事な5つのポイント
テンプレートで紹介した情報を書く際には以下の5つのポイントを意識しながら書くと良いです。
- 明確かつ簡潔な表現
- 論理的な構成
- 具体的な事実とデータの利用
- 読み手の視点を考慮
- 適切な敬意表現
明確かつ簡潔な表現
冗長な表現や専門用語を避け、明確かつ簡潔な表現を心がけましょう。読み手が理解しやすい言葉を選びます。技術的な専門用語や略語はできるだけ避けることで、誤解を避けることが可能です。どうしても専門用語を使用しなくてはならない場合は、説明を添えて読み手にわかりやすく伝えます。
意識するのは5W2H
書き手が5W2Hを意識すると、読み手にとって意図や目的が伝わりやすい稟議書を作れます。稟議書作成の際に意識するべき5W2Hとは以下のことです。
- When(いつ):いつ稟議書が提出されたのか
- Where(どこで):どの部署から稟議書が提出されたのか
- Who(誰が):稟議書を提出したのは誰か
- What(何を):稟議書の内容
- Why(なぜ):稟議書を提出する理由
- How(どうやって):具体的に望んでいること
- How much(いくらで):稟議を叶えるためにかかるコスト
論理的な構成
稟議書は論理的な流れで構成されるべきです。情報が整然と組織されていないと読み手が迷子になりやすいです。順序立てて要点を伝え、提案の流れを理解しやすくすることが求められます。
文章だけでは相手に伝わりにくそうなら、図や箇条書きなども利用していきましょう。
具体的な事実とデータの利用
具体的な事実とデータの利用が提案の信憑性を高めます。主張や提案を裏付けるために、具体的な数字や事例を挙げ、根拠を示すことが必要です。これにより、読み手が納得しやすくなります。
読み手の視点を考慮
読み手は上層部や管理者です。彼らが求める情報や重要視するポイントをあらかじめ理解しておけば、それに基づいた提案を練ることができます。読み手の期待に応える内容であるほど、稟議は通りやすくなるでしょう。
適切な敬意表現
稟議書は上司や関係者に提出されるものです。そのため、敬意を表す言葉遣いや丁寧な表現は相手との間に信頼を築く上で重要になります。
稟議書を書くメリット
代表的なメリットは以下の3つです。
- 意思決定の効率化
- プロジェクトの透明性
- 責任の明確化
意思決定の効率化
情報を整理し、提案やプロジェクトに関する重要な事項を明確に示すことで、管理者はよりスムーズに判断を下すことができます。稟議書では冗長な説明を排除することも重要です。
プロジェクトの透明性
提案者と関係者が同じ情報を共有することで、プロジェクトの進捗や目標が透明になります。組織内でのコミュニケーションが円滑になることも期待できます。
責任の明確化
提案者が稟議書を通じて提案をし、管理者がその承認を行うことで、プロジェクトや提案における責任の所在が明確になります。この透明性によって各関係者が自身の責務を理解し、スムーズなプロジェクト進行が期待できます。
稟議書を書くデメリット
稟議書を書く際のデメリットには、手間と時間がかかることが挙げられます。稟議書の作成は十分な調査と検討が必要であり、提案の目的や理由を明確に伝えるためには詳細な情報が必要です。この詳細な情報の収集や整理には、どうしても手間と時間がかかってしまいます。提案者はプロジェクトやアイディアに関する深い理解を示す必要があり、その理解の度合いが稟議書の充実度に大きく関わってくるのです。
稟議書を通すコツ
最後に稟議書を通すコツを紹介します。
- 事前の調査と検討
- 明確なコミュニケーション
- 柔軟性
- メリットとデメリットを明確にする
- 関係者との事前調整
事前の調査と検討
提案内容に信頼性と説得力を持たせるためには、充分な調査が欠かせません。データや事実に基づいた根拠があることで、承認者は提案の信憑性を高く評価することができます。この段階での十分な準備が、稟議書を通すための第一歩です。
明確なコミュニケーション
提案者と管理者との間に明確で適切なコミュニケーションがないと、提案内容が適切に理解されない可能性があります。その場合、承認プロセスがスムーズに進行しづらくなるでしょう。相手の質問や疑問に迅速かつ明確に答えることで、相手との間の信頼関係を築きやすくなります。
柔軟性
フィードバックを受け入れ、必要に応じて提案内容を修正する柔軟性が求められます。提案者は自らの意見に固執せず、改善の余地があれば遠慮なく取り入れる姿勢が大切です。最初は拒否されても、提案内容がより洗練されることで、稟議書が通ることもあります。
メリットとデメリットを明確にする
メリットの強調は稟議書の重要性をアピールする手段となり、同時にデメリットを説明することで、提案内容の理解を促進します。
関係者との事前調整
前もって関係者と事前調整しておけば、相手は提案の内容への理解を深めてくれるため、承認を得やすくすることができます。
稟議書をワークフローシステムを使って回覧する
ワークフローシステムを使うことで、稟議書を関係者にスムーズに回覧することができます。ここでおすすめのワークフローシステムを紹介します。
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まとめ:読み手の視点に立つことが大事
稟議書は企業においてスムーズな意思決定を実現するための手段として欠かせません。効果的な稟議書の作成には、構成の明確さ、具体的な情報の提供、読み手の視点を考慮することが必要です。一方で、時間と手間がかかるデメリットもあるため、柔軟かつ効率的な作成が求められます。これらのポイントを押さえつつ、稟議書を通じて的確な意思決定を実現しましょう。