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電子帳簿保存法にどう対応する?知っておくべき6つのチェックポイント

経理・財務システム
経理・財務システム

この記事では電子帳簿保存法改正に関する、知っておくべきポイントを6つ紹介します。そして、この記事で紹介するポイントを踏まえた上で、電子帳簿保存法への対応や今後導入するITツールなどをご検討ください。

簡単にわかる電子帳簿保存法

電子帳簿保存法(電帳法)は、デジタル化の進展に伴い、2022年1月に大幅な改正が行われました。

この改正により2024年1月から、取引データを紙で保存することは原則として認められなくなり、取引データの電子保存が完全に義務化されました。

電子帳簿保存法の目的

電子帳簿保存法改正には、以下のような目的があります。

  • 企業の生産性向上
  • ペーパーレス化の促進
  • 税務行政の効率化

電子帳簿保存法の対象

個人事業主を含む全ての事業者が対象です。

6つのポイントで理解する:電子帳簿保存法改正

では、電子帳簿保存法改正について、より詳しく知るために6つのポイントを紹介します。

  1. 電子取引における電子データ保存の義務化
  2. 事前承認制度の廃止
  3. 保存要件の緩和
  4. スキャナ保存の要件緩和
  5. 電子帳簿の優遇措置
  6. 検索機能の確保

ポイント1:電子取引における電子データ保存の義務化

全ての事業者に対して電子取引データの電子保存が義務付けられました。

  • 対象:メールやクラウドサービスを通じて受け取った請求書、領収書など
  • 期限:取引発生時点から保存義務が生じる
  • 方法:改ざん防止措置を施した上で検索可能な状態で保存

つまり、電子取引データを適切に管理・保存するシステムやプロセスを整備する必要があります。

ポイント2:事前承認制度の廃止

これまでは、電子帳簿やスキャナ保存を開始する際に税務署の事前承認が必要でした。しかし、この制度は廃止され、現在は任意のタイミングで電子保存できます​。

ポイント3:保存要件の緩和

電子帳簿保存法の改正により、タイムスタンプの付与期限が「3営業日以内」から「2ヶ月と7営業日以内」に緩和されました。この改正により、現場での運用負担が軽減されています。しかし、改正後も「訂正・削除記録が残るシステム」や「改ざん防止措置」を取る必要があります。

たとえば、請求書を受け取った場合、以前は受領後すぐにタイムスタンプを付与する必要がありましたが、現在は業務の繁忙期でも一定の猶予があるため、受領したデータを一括管理する体制を整えやすくなりました。

保存要件を満たすための具体例

  1. タイムスタンプの付与を自動化
    電子取引データを受領するたびに、システムが自動でタイムスタンプを付与する設定にすると、タイムスタンプ作業を手動で行う必要がありません。
  2. システムで改ざん防止を実現
    訂正や削除の記録が残る機能を持ったシステムを導入すると、データ編集の履歴が自動的に記録され、不正が疑われた場合でも簡単に確認できます。
  3. 社内手続きの見直し
    データ保存に必要な手続きやフローを簡略化し、現場での実行を容易にします。たとえば、受領データを専用フォルダにアップロードするだけでシステムが自動処理する仕組みを構築すれば、手作業のミスを防げます。

ポイント4:スキャナ保存の要件緩和

スキャナ保存における要件が緩和されたことで、保存形式や解像度の厳格な制限がなくなり、運用が容易になりました。ただし、要件を緩和されたからといって適当に保存してよいわけではなく、最低限の基準を満たす運用が必要です。

スキャナで保存する際の具体例

具体例として、領収書や契約書をスキャナで保存する場合を考えてみます。この場合、以下の手順で運用を整備することが重要です。

  1. スキャナの設定確認
    解像度(例:200dpi以上)、カラーモード(白黒やグレースケールなど)を確認し、基準を満たす設定を行います。
  2. データ保存の一元管理
    スキャンしたデータは必ずクラウドシステムや社内の専用フォルダにアップロードし、散逸を防ぎます。
  3. 定期的な監査の実施
    保存データが適切に管理されているかをチェックします。たとえば「全てのスキャンデータに日付が付与されているか」「必要な項目で検索できるか」を月次で確認し、問題があれば担当者に教育を実施したり、運用方法を見直したりする必要があります。
  4. 改ざん防止措置の導入
    スキャナ保存では、改ざんができないような仕組みが必要です。具体的な対策としては、スキャン後、PDFに変換して編集ロックをかける、あるいはデータを受け取った時点でタイムスタンプを付与するなどです。

ポイント5:電子帳簿の優遇措置

適切な電子帳簿(優良な電子帳簿)を保存している企業には、税務調査の際の負担が軽減されるなどの優遇措置があります。

ポイント6:検索機能の確保

保存するデータには、日付、取引先、金額などで検索できる機能が必要です。

  • 必要な検索項目:取引年月日、勘定科目、取引金額、その他の項目(取引先名など)
  • 検索の種類:範囲指定、階層検索、キーワード検索

検索機能を確保するための具体的な方法

検索機能を確保するための方法としては次のようなものがあります。

  • ファイル名に「取引年月日」「取引金額」「取引先名」を含める
  • Excelなどの表計算ソフトで索引簿を作成する
  • 検索機能があるシステムを利用する

電子帳簿保存法への対応:ステップ式で紹介

企業が電子帳簿保存法に対応するためには、以下のステップを踏むことが必要です。

  1. 現状の把握
  2. ITツールの選定
  3. 社内体制の整備
  4. 運用と評価

ステップ1:現状の把握

まず現在、紙媒体、Excel、専用ソフトなど、どのような形式で帳簿や取引データを保存しているのかを整理します。その上で保存されているデータが電子帳簿保存法の要件を満たしているかをチェックします。

具体的な行動

たとえば以下のような課題を洗い出します。

  • 電子取引データは全て保存しているが、検索機能がない
  • スキャナ保存のルールが不明確

また、経理、営業、ITなどの関係する部門にアンケートを実施し、データ保存や運用の問題点を把握しましょう。現状を正確に把握することで、次のステップで適切なツールやプロセスを選定できる基盤が整います。

ステップ2:ITツールの選定

続いて、具体的なITツールの選定に進みます。

電子帳簿保存法に対応した会計システム、経費精算システム、文書保管システムなど、どのようなITツールを導入するのかを検討します。コストや操作性、サポート体制などを総合的に評価し、自社に最適なシステムを選定しましょう。

具体的な行動

選定時には、導入費用やランニングコスト、ツールの操作性、サポート体制を比較しましょう。無料トライアルが提供されている場合、実際に操作してみるのも効果的です。

また、法改正に伴う追加対応の必要性も確認してください。たとえば、「改ざん防止措置があるか」「検索機能を簡単に設定できるか」といったチェックリストを作成し、候補となるツールを評価しましょう。

ステップ3:社内体制の整備

ITツールを導入しただけでは運用は円滑になりません。ツールの使い方や電子帳簿保存法に関するルールを社内で共有することが重要です。

具体的な行動

たとえば以下のような具体的な運用ルールを決めます。

  • 全社員が請求書をスキャナ保存する際は〇〇形式で保存する
  • 取引先の変更があれば即座にシステムに反映する

また、担当者向けにツールの操作説明会を開き、操作ミスを減らします。

社内のITリテラシーが低い場合は、操作マニュアルを作成したり、外部講師を招いて研修を実施するのも良い方法です。定期的にルールが守られているか監査を行い、必要に応じて改善を行なってください。

ステップ4:運用と評価

ツールの導入や社内ルールの整備が完了したら、実際に運用を開始します。運用開始後は、現場からのフィードバックを積極的に集め、課題を特定しましょう。

具体的な行動

たとえば「検索機能の使い勝手が悪い」「データの登録に手間がかかる」などの問題があれば、設定を変更したり、操作方法を再教育する必要があります。

また、法改正や運用環境の変化にも柔軟に対応するため、半年に1回などの頻度で運用状況を見直す仕組みを作りましょう。

評価の際には、電子帳簿保存法の基準が守られているか、ITツールが十分なコスト効果を発揮しているかを指標として設定し、改善を繰り返します。

電子データ保存に関するペナルティ

電子帳簿保存をする際に、改ざんなどの不正が見つかれば当然罰せられます。また、電子取引データの保存義務を怠った場合にも、相応のペナルティが課されるのでご注意ください。

1. 重加算税の加重措置

電子取引データやスキャナ保存データにおいて、改ざんや隠蔽などの悪質な不正が発覚した場合、通常の重加算税(追徴課税額の35%)に加え、さらに10%が加重され、合計で45%の重加算税が課される可能性があります。 

2. 青色申告の承認取消し

電子取引データの保存義務を怠った場合、直ちに青色申告の承認が取り消されるわけではありませんが、税務調査時に帳簿書類の提示を拒否するなどの行為など、悪質と判断されることがあれば、法人税法・所得税法に則り、青色申告の承認取消しの事由となる可能性があります。 

3. 会社法による過料

電子帳簿保存法に対応せず、帳簿や書類の改ざんや不正が認められた場合、会社法第976条に基づき、100万円以下の過料が科せられる可能性があります。 

4. その他の不利益

電子帳簿保存法の要件を満たさない場合、税務調査時に必要な書類を適切に提示できず、結果として不利になる可能性があります。

これらの罰則や不利益を避けるためにも、電子帳簿保存法の要件を正しく理解し、適切な対応を行うことが重要です。

電子帳簿保存法に対応するおすすめITツール

電子帳簿保存法に対応するための、おすすめITツールを紹介するので、参考にしてください。
※これらの製品情報の閲覧には「DXPOオンライン会員登録」が必要です。

(株)ICSパートナーズ

戦略情報会計システム「OPEN21 SIAS」

会計データから経営分析まで一気通貫の経営管理ソリューション

会計情報ほか、あらゆる社内システムで保有するデータをSIASに集約することで、経営分析がスムーズに。経営判断・意思決定のスピードアップを実現します。

(株)マネーフォワード

マネーフォワード クラウド経費

電子帳簿保存法対応!営業も経理も効率化できる経費精算システム

マネーフォワード クラウド経費は、各種申請から承認、仕訳、振込まで一元管理が可能。電子帳簿保存法対応で、ペーパーレス運用・テレワークの実施も実現

(株)ミロク情報サービス

MJS e-ドキュメントCloud

取引文書や契約書の電子化を実現するクラウドサービス

「MJS e-ドキュメントCloud」は電子帳簿保存法に対応した証憑の電子保管をする「キャビネット」と契約を電子化する「サイン」の二つを提供するクラウドサービスです。

電子帳簿保存法への対応:まとめ

本記事では、電子取引データ保存の義務化や事前承認制度の廃止などの法改正ポイント、さらに具体的な対応ステップについて解説しました。

電子帳簿保存法への対応は、法的要件を満たすだけでなく、業務プロセスの改善やコスト削減のチャンスでもあります。現状の課題を明確にし、自社に適したITツールを選定しながら、効率的かつ適法な運用体制を構築することが成功の鍵です。これを機に、デジタル化を進めて新しい業務スタイルへの移行を目指しましょう。

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