展示会は、企業が製品やサービスを直接紹介できる貴重な場です。来場者との接点を増やすために、声かけやノベルティ配布など、さまざまな工夫を凝らしている企業も多いでしょう。
しかし善意のアプローチが、かえって来場者の足を遠ざけている可能性がある事をご存知でしょうか。この記事では、逆効果とされる「声かけ」について、アンケート調査からわかった、来場者が持つ印象をご紹介します。
来場者が語る“違和感”
展示会のアンケートには、来場者の率直な声が数多く寄せられています。中でも目立つのが、呼び込みに対する違和感や不快感です。
「道をふさがれて怖かった」「歌舞伎町のキャッチのようだった」「QRコードの読み取りを強要された」など、来場者は“自由に見たい”という気持ちを阻まれることに強いストレスを感じています。
来場者は情報収集や比較検討を目的に来場しており、強引な声かけはその目的を妨げる行為になりかねません。まずは、こうした声を真摯に受け止めることが、改善への第一歩です。
なぜ“熱心な呼び込み”が逆効果になるのか
企業側は、来場者との接点を増やすために声をかけます。ノベルティを手渡したり、QRコードの読み取りを促したりするのも、見込み客との関係を築くための努力です。
しかし、来場者がまだ興味を持っていない段階で声をかけられると、警戒心が先に立ちます。とくに以下のような行動は、信頼を損ねる原因になります。
- QRコードの読み取りを強要する
- 名刺交換を目的化する
- ノベルティを無理に渡す
- 挨拶なしでいきなり勧誘する
これらの行為は、来場者を“数合わせの対象”と感じさせてしまいます。企業の誠実さや姿勢が伝わる前に、印象が悪化してしまうのです。
もちろん、呼び込み自体が悪いわけではありません。適切なタイミングと配慮があれば、来場者との良い関係を築くきっかけにもなります。
来場者に届く“ちょうどいい声かけ”とは
来場者が心地よく感じる声かけには、共通するポイントがあります。それは「選択の余地を残すこと」と「押しつけないこと」です。
たとえば、以下のような言葉は安心感を与えます。
- 「ご自由にご覧ください」
- 「気になることがあればお声がけください」
- 「よろしければご説明いたします」
こうした声かけは、来場者のペースを尊重しながら、企業の姿勢を伝えることができます。ノベルティは“興味を持った人への感謝”として渡すことで、押しつけ感がなくなります。
QRコードの取得や名刺交換も、会話の流れの中で自然に行うことで、納得感が生まれます。声かけは“売り込み”ではなく、“きっかけづくり”と捉えることが、成果につながるのです。
展示会の本質を取り戻すために
展示会は、単なる集客イベントではありません。企業と来場者が信頼関係を築く場です。来場者は情報収集や比較検討を目的に来場しており、安心してブースを回れる環境が求められています。
強引な呼び込みやノベルティの押しつけは、来場者の目的を妨げるだけでなく、企業の印象を悪くするリスクもあります。
むしろ、静かで落ち着いたブースの方が「じっくり見られる」「話しかけられるタイミングを自分で選べる」と好印象を持たれる傾向があります。
展示会の本質は“対話”と“理解”です。来場者の立場に立った運営を心がけることで、企業の魅力が自然と伝わる空間になります。
展示会での呼び込み改善策
1. 来場者の“視線と動き”を観察する
来場者がブースに興味を持っているかどうかは、目線や足の動き、立ち止まり方で判断できます。興味がある人にだけ声をかけることで、押しつけ感を減らせます。
2. 声かけは“選択肢”を与える言い方にする
「ご自由にご覧ください」「気になることがあればお声がけください」など、来場者のペースを尊重する言葉を使うことで、安心感を与えられます。
3. ノベルティは“感謝”として渡す
通りすがりの人に無理に渡すのではなく、会話が生まれた後に「お越しいただいた記念に」と渡すことで、自然な交流になります。
4. QRコードや名刺交換は“納得感”を重視
いきなり求めるのではなく、製品やサービスの説明をした後に「よろしければ」と促すことで、信頼関係を築けます。
5. スタッフの態度と表情を整える
笑顔・アイコンタクト・丁寧な言葉遣いは、来場者の警戒心を和らげます。第一印象がすべてを左右します。
印象は企業の未来を左右する
展示会は、企業の“顔”を来場者に見せる場です。製品やサービスだけでなく、企業の姿勢や価値観が伝わる場でもあります。
来場者が「また話を聞きたい」「この企業は信頼できそう」と感じるかどうかは、ブースでの対応次第です。その印象が、企業の未来を大きく左右します。
展示会の本来の目的は何か―それを改めて考えることで、来場者が真剣に商談の機会を作ることができ、展示会の成果をあげることができるのではないでしょうか。