デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代において、新たなテクノロジーの導入やデジタルプロセスの拡充は非常に重要です。しかし、DX化によってセキュリティリスクが増大してしまうことも忘れてはいけません。この記事ではIT管理者に向けて、DXを進めていく際の情報セキュリティ対策について解説します。
情報セキュリティとDXの関連性
DXの進展において、情報セキュリティが果たす役割は決して小さくありません。企業がデジタルトランスフォーメーションを進める中、情報セキュリティはビジネスの持続性や信頼性に直接的な影響を及ぼします。
DXの進展は、ビジネスの俊敏性や効率性を向上させます。一方でその進化と同じスピードで新たな脆弱性や脅威が増大するのも事実です。そのため、DXを進展させていくのであれば、あわせて情報セキュリティ対策に目を向けなければなりません。
DXを推進すると事故に遭いやすい
では、DXを進めていくことでどのような事故が起こりやすいのでしょうか。トレンドマイクロ社の調査によるとDX を推進する企業や組織のうちの約 35.2%が、なんらかの形で事故を経験しているそうです。
参照:DX 推進における法人組織のセキュリティ動向調査 トレンドマイクロ社
被害に遭う可能性が高いセキュリティ被害
とくに被害に遭いやすいのは以下の4つです。
ランサムウェア
感染によってコンピューターのデータへのアクセスを不可能にし、データを暗号化して使えなくするマルウェアです。感染するとデータが使えなくなり、DXが困難になる可能性があります。また、ランサムウェアの解除と引き換えに取引を要求する犯罪者も存在します。
標的型攻撃
特定のサーバーを狙って侵入を試みるサイバー攻撃です。機密情報や顧客情報の漏えいにより信用問題が生じる可能性があります。また、サーバーやシステムの改ざんも行われることがあるため、標的型攻撃を防ぐためにはファイアウォールの構築が必要です。
フィッシング詐欺
メールやSMSを通じてウェブサイトに誘導し、IDやパスワード、クレジットカード情報を盗む手法です。オンライン業務が増える中、従業員がフィッシング詐欺に遭わないようにリテラシー教育を実施し、対策を講じることが必要でしょう。
内部不正
従業員やパートナー企業によるデータの漏洩や不正利用のリスクもあります。データ共有時にはアクセス制限を設けるだけでなく、アクセスやデータの変更ログを記録し、セキュリティ対策を実施することが重要です。
IT管理者が行うべき情報セキュリティ対策とは
情報セキュリティの向上は単なるリスク回避だけでなく、企業の信頼性向上にも繋がります。では、具体的にIT管理者はどのようなポイントに目を向けるべきなのでしょうか。この記事では6つのポイントにまとめました。
- リスク評価と管理
- アクセス制御
- セキュリティポリシーの策定と実施
- ネットワークセキュリティ
- インシデント対応計画の構築
- モバイルデバイスのセキュリティ
1:リスク評価と管理
リスクの評価と特定
企業全体の情報セキュリティに対するリスクを正確に評価し、特定することが重要です。外部からのサイバー攻撃、内部からの情報漏洩、自然災害など、さまざまなリスク要因の洗い出しを行いましょう。リスクの特定が不十分だと、対策が困難です。
脆弱性の把握
リスクの把握と同様、システムやネットワークの脆弱性を正確に把握することも大事です。セキュリティスキャン、ペネトレーションテスト、脆弱性評価などの手法が活用して、自社のシステムがどのような攻撃に脆弱性を抱えているのかを理解します。
適切なリスク管理戦略の構築
適切なリスク管理戦略を構築します。リスクを回避するための対策、軽減するための対策、リスクを受け入れる際の対応などです。
2:アクセス制御
権限の適切な設定
アクセス制御の基本は、権限の適切な設定です。IT管理者は、各ユーザーやロールに対して必要最小限の権限を与えることで、不必要なアクセスを防ぎます。
アクセスログの監視
アクセスログの監視は、不正なアクセスを検知するために欠かせません。システムやデータベースへのアクセスログを定期的に確認し、異常なアクティビティを検知することで即座に対処できます。
最小権限の原則
「最小権限の原則」とは、必要最小限の権限のみを与えるという原則です。従業員や関係者に与える権限を検討し、それぞれの業務遂行に必要な範囲だけ権限を与えます。そうすることで、機密情報へのアクセス権が不必要に広がることを防げます。
3:セキュリティポリシーの策定と実施
明確で実行可能なポリシーの策定
セキュリティポリシーは明確かつ実行可能であることが重要です。かつ、従業員や関係者が理解しやすく、具体的な行動指針を提示すると良いでしょう。基本的には、ビジネスの特性やリスクに応じるための適切なポリシーを策定します。
セキュリティ意識向上のためのトレーニングと教育
セキュリティポリシーが効果的に機能するためには、全ての従業員がセキュリティに対する理解を深める必要があります。トレーニングや教育プログラムを通じて、社内のセキュリティ意識を向上させられるようにしましょう。
セキュリティポリシーの実践と評価
策定されたセキュリティポリシーが、実際に実践されているかどうかを定期的に評価することも重要です。セキュリティポリシーの実施状況をモニタリングし、必要に応じて修正や更新を行います。
4:ネットワークセキュリティ
適切なセキュリティツールの導入
ネットワークセキュリティの基本は、適切なセキュリティツールの導入です。具体的には、ファイアウォールや侵入検知システム(IDS)などです。これらのツールの選定と適切な設定が、ネットワークの安全性を確保する鍵となります。
定期的な脆弱性スキャン
ネットワークの脆弱性は絶えず変化しています。定期的に脆弱性スキャンを実施し、システムやアプリケーションの脆弱性を特定しましょう。そうすることで、セキュリティホールを未然に封じ、悪意ある攻撃からネットワークを守りやすくなります。
パッチ適用の徹底
セキュリティ維持のために、定期的なパッチ適用も欠かせません。ネットワーク上の各デバイスやソフトウェアに対して最新のセキュリティパッチを適用し、既知の脆弱性からくるリスクを最小限に抑えるよう意識してください。
5:インシデント対応計画の構築
インシデント対応計画の策定
さまざまなセキュリティインシデントに対する具体的な手順や担当者の指示、連絡先などを、あらかじめ決めておきます。インシデント対応は、リスクに応じて柔軟かつ実行可能なものであるべきです。
定期的なテストと訓練
インシデントに対する計画は策定だけではなく、定期的なテストと訓練が重要です。想定されるインシデントシナリオに基づいて計画を実際にテストし、関係者が計画に基づいた行動を実際に行えるように訓練します。
多岐にわたるインシデントへの対応策
インシデントは多岐にわたります。セキュリティ侵害、データ漏洩、機器故障などさまざまな形態があるでしょう。インシデント対応計画を構築する際には、これらの多岐にわたるインシデントに対する具体的な対応策を含めることが重要です。
6:モバイルデバイスのセキュリティ
モバイルデバイス管理の徹底
モバイルデバイスの管理は、企業のセキュリティポリシーの一環として徹底されるべきです。各デバイスの適切な登録や設定を行い、ネットワークへのアクセスを制御しましょう。また、紛失や盗難時などの、緊急時への対応策も確立ておくべきです。
暗号化と認証の導入
データの暗号化と強力な認証手法の導入は、モバイルデバイスセキュリティの基本です。暗号化された状態であれば、デバイスからデータを外部に送信する際も、機密情報の漏洩を防ぐことができます。また、認証プロセスが堅牢であればある程、不正アクセスからデバイスを守りやすくなります。
モバイルセキュリティポリシーの策定
モバイルデバイスに関するセキュリティポリシーも、具体的に策定しておくべきです。従業員に対しては、適切なセキュリティ意識を持ってもらうためにポリシーの内容を明確に伝えましょう。そうすることで、従業員たちがセキュリティに配慮した行動を取りやすくなります。
情報セキュリティ対策のためのサービス
情報セキュリティ対策でおすすめのサービスを紹介します。
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NTTデータ ルウィーブ(株)
Cisco Umbrella
インターネット上の脅威を最前線で防御する新しいセキュリティ
SASE・ゼロトラストを構成するSecure Web Gatewayのインターネットセキュリティです。 マルウェア、ランサムウェアから社内外を守ることができます。
(株)アイ・エス・ビー
モバイルデバイス管理「FiT SDM」
会社と社員の情報を守る。情報システム部門の味方です。
デバイスのビジネス活用を支援するクラウド型MDM (モバイルデバイス管理)サービス。紛失・盗難対策、デバイス制御など端末の一括管理。会社と社員の情報を守り安全にデバイス活用。
まとめ
IT管理者は、情報セキュリティをDXの一環として捉える必要があります。適切な情報セキュリティ対策を講じた上でDXを安全に進展させていってください。情報セキュリティ対策は単なる防御ではなく、企業の信頼性やビジネス継続性にも深く関わるものです。