近年、企業や組織の業務環境がどんどんデジタル化されています。テレワークやオンライン会議の普及に伴い、オフィスに出社せずに働く方も増えていることでしょう。この流れを受けて電子印鑑の導入を検討する企業も増えています。
電子印鑑とは印影を電子データ化したもので、紙の文書に捺印する代わりに電子文書に貼り付けることで、押印・捺印と同等の効力を有します。本記事では、電子印鑑の作成方法からその導入までの流れ、採用するメリットとデメリット、そして今後の展望について掘り下げます。
電子印鑑普及までの流れ
ビジネス界において電子印鑑が普及しつつあるのは以下の流れがあるからです。
- デジタルトランスフォーメーションの進展
- 法的な基盤の整備
- 技術の進化
デジタルトランスフォーメーションの進展
現在、多くの企業がペーパーレス化を図ろうとしています。紙文書からデジタル文書への移行を進め、業務プロセスの合理化を図っているのです。ペーパーレス化が進めば捺印や押印の必要性は薄れるため、電子印鑑の需要が高まっています。電子印鑑が従来の押印や捺印の方法に変わる新しい標準となりつつあります。
法的な基盤の整備
日本での電子印鑑の法的効力は、「電子署名及び認証業務に関する法律」(電子署名法)によって保証されています。ただし、以下の条件を満たす必要があるため、ご注意ください。
- 電子文書に付加された署名データであること
- 本人性が確認できること
- 改ざんが行われていないことを確認できること
これらは、電子署名法第3条に基づいています。また、法的効力を持つ電子印鑑には、認証局が発行する電子証明書とタイムスタンプが必要です。
法的効力を持たせるためには、すべての契約書や行政手続きで電子印鑑が利用できるわけではありません。導入前には、必ず適用範囲を確認してください。
技術の進化
デジタル技術の進歩により、電子印鑑は高度なセキュリティ機能や利便性を備えるようになりました。生体認証や暗号化技術の導入により、安全性は向上しています。
電子印鑑を採用するメリット
企業や組織での電子印鑑の採用には以下のメリットがあります。
- ペーパーレスオフィスの実現
- リモートワークの推進
- データセキュリティの向上
ペーパーレスオフィスの実現
電子印鑑を導入することで、従来の印鑑のように紙文書に押印する必要がなくなり、ペーパーレスオフィスの構築が可能です。環境負荷の削減と業務の効率向上が期待できます。
リモートワークの推進
電子印鑑は使う場所を選ばないため、リモートワークの実現を促進します。
データセキュリティの向上
生体認証や暗号化技術を組み合わせれば、文書の信頼性とセキュリティを高めることもできます。紙文書の紛失や改ざんのリスクを軽減し、データの安全性を確保することが可能です。
電子印鑑を採用するデメリット
電子印鑑の採用にはメリットばかりではありません。デメリットも確認しておきましょう。電子印鑑の導入には以下のデメリットがあります。
- 導入コスト
- 法的な変更への対応
導入コスト
有料のツールを使う場合は、電子印鑑の導入に初期コストがかかります。
従業員達へのサポートが必要
新たなツールの導入には従業員達の同意も必要です。とくに長く続いている組織や企業では、従来の印鑑の使用に慣れ親しんでいる従業員が多いことも想定できます。その場合、従業員達をスムーズに電子印鑑に移行させるためには、メリットの説明などが必要かもしれません。ITに疎い従業員にはサポートも必要です。
法的な変更への対応
法的な環境が変わると、それに対応する必要があります。
電子印鑑導入の際に押さえておきたいポイント
ポイントは全部で3つです。
- 企業のニーズや予算に合った電子印鑑を選ぶ
- セキュリティ対策を講じる
- 運用ルールを定める
企業のニーズや予算に合った電子印鑑を選ぶ
電子印鑑には無料ツールから有料ツールまで、さまざまな種類があります。企業のニーズや予算に合った電子印鑑を選ぶことが重要です。
セキュリティ対策を講じる
電子印鑑は、従来の印鑑よりもセキュリティ対策が必要となります。タイムスタンプや改ざん検知機能などのセキュリティ機能を備えた電子印鑑を選ぶなど、セキュリティ対策を講じることが重要です。
運用ルールを定める
電子印鑑を導入したら、運用ルールを定める必要があります。電子印鑑の使用方法や管理方法などを明確にしておくことで、セキュリティを高めるだけではなく、従業員達が安心して電子印鑑を使用できるようになります。
電子印鑑の作成方法
電子印鑑の作成方法は、大きく分けて以下の3つがあります。
- 印影をスキャンして自作する
- 無料ツールを使用して作成する
- 有料ツールを利用する
印影をスキャンして自作する
最も簡単な方法は、実物の印鑑をスキャンして電子データ化することです。印影を真っ白な紙に押印し、スキャナーで読み込みます。読み込んだ画像データをWordやExcelなどの文書作成ソフトに貼り付ければ、電子印鑑の完成です。この方法なら無料で作成できるため、初期費用はかかりません。ただし、印影の解像度が低い、印影がぼやけて見える、などの問題が発生する可能性があります。
無料ツールを使用して作成する
インターネット上には、電子印鑑を作成できる無料ツールが多数公開されています。これらのツールは印影のデザインやサイズなどを自由にカスタマイズできるため、好みの電子印鑑を作成することができます。ただし、ツールによっては印影の解像度が低い場合や証拠能力が低い場合があるので、注意が必要です。
有料ツールを利用する
印影の解像度や証拠能力を重視するなら、有料ツールを利用する方法がおすすめです。有料ツールは印影の高精細化やタイムスタンプの付与など、セキュリティや信頼性を高める機能を備えているものが多くあります。
今後の展望:電子印鑑、今後はどうなる?
結論から申し上げれば、今後の電子印鑑の普及は更に進むと考えられます。その理由には以下の4つが挙げられます。
- テレワークの普及
- 電子契約サービスの発展
- さまざまなデジタルツールとの統合
- 法整備の進展
テレワークの普及
テレワークは今後も無くなりません。むしろ今以上に増えていくでしょう。従業員がオフィスに常駐しないケースが増えていけば、電子印鑑の利便性も同時に増加します。テレワーク環境でも押印・捺印が可能である電子印鑑の存在は、ビジネスのマストアイテムになる可能性まであります。
電子契約サービスの発展
近年、電子契約サービスの利用が拡大しています。電子契約サービスとは、電子印鑑を利用した契約締結を支援するサービスです。
さまざまなデジタルツールとの統合
近年、デジタルツール同士の統合が進んでいます。電子印鑑も今後、さまざまなデジタルツールとの統合が進んでいくことでしょう。すると、これまで以上に電子印鑑は当たり前のツールになっていくと予測できます。
法整備の進展
2022年の電子署名法の改正により、電子印鑑にも法的効力が認められました。電子印鑑の法的地位が明確化されたため、今後は更に普及が促進されると考えられます。
まとめ
企業のデジタル化を目指すのであれば、電子印鑑の導入は必須と言えるでしょう。ただし、印鑑に関する法的な規制は変化しているため、企業は常に最新の法令を把握し、適切な対応を行うことが求められます。