残業は仕事の一環として発生することがあり、残業が発生した場合は、もちろん残業代として正確に支払われなければなりません。これは、管理者にとっても労働者にとっても非常に重要です。この記事では残業代の正確な計算方法について解説します。
知っているようで知らない「残業代」
残業代とは、法定労働時間を超えて働いた場合に支払われる賃金であり、労働者の権利でもあります。労働基準法第37条では、労働時間は原則として1日8時間、週40時間までと定められているため、この法定労働時間を超えて働いた場合の労働者が働いた時間を「残業」として扱います。
残業代は「1時間当たりの基礎賃金」をベースに計算される
アルバイトやパートの方の場合、その方の時給がそのままベースになります。一方、月給が決まっている、いわゆる一般的なサラリーマンの場合は、まず「1時間当たりの基礎賃金」を本人が知らなければなりません。1時間当たりの基礎賃金は以下の計算方法で出します。
1時間当たりの基礎賃金=その月の所定賃金額÷その月の所定労働時間
通勤手当(交通費)や家族手当、住宅手当などは所定賃金額に含まれません。
残業代はあくまで法定労働時間が基準になる
注意しなければならない点は、1日の所定労働時間が8時間未満の企業で、所定労働時間を超えて働いた場合です。たとえば、1日の所定労働時間が6時間の企業で、労働者が8時間働いた場合、労働者は「今日は2時間残業した」と考えるかもしれません。
しかし、法定労働時間では1日8時間までの労働は残業として扱わないため、このケースでは残業代がつきません。残業代はあくまで法定労働時間が基準であり、企業と労働者の間で交わした契約とは無関係なのです。1日の労働時間が8時間を超えるか、週40時間を超えるかで、はじめて残業手当が発生します。
残業代の計算方法
残業代の計算方法は、労働基準法で定められています。労働基準法第37条第5項では、残業代の割増率は、通常の賃金の25%以上と定められています。
つまり、時給1,000円の方が1日に10時間の労働をした場合、1日の所定労働時間は8時間のため、2時間分の残業代が発生します。その日の労働賃金は(1,000円✖︎8)プラス(1,000円✖️1.25✖️2)という計算方法で出します。
ただし、一部の管理者には法定労働時間が適用されない場合もあります。その場合は「残業」という概念自体がなくなるため、残業代も適用されません。
残業時間が月に60時間を超えた場合
2023年4月より、残業時間が月に60時間を超えた場合は残業での割増率が50%で計算されるようになりました。そのため、月に60時間を超えてからの時給1,000円の方の賃金は(1,000円✖️1.5✖️時間)という計算方法で出します。
休日出勤について
世の中には週休1日で働いている方や週休2日で働いている方など、さまざまです。この「休日」には2種類あり、法定休日と法定外休日というものがあります。法定休日は法律で定められているもので、週に1回以上、または4週で4回以上、労働者に与えられなければなりません。そして、この法定休日に労働をした場合は、「1時間当たりの基礎賃金」の1.35倍の賃金が労働者に支払われなければなりません。これが休日手当です。
この法定休日がいつなのかは、企業によって異なります。たとえば、週休2日のサラリーマンの場合、土曜は法定外休日、日曜は法定休日というケースも存在するのです。すると、その企業で土曜日に出勤をしても休日手当はつきません。日曜日に出勤をした場合のみ、休日手当がつきます。
また、法定休日労働と時間外労働は重複しません。そのため、法定休日に8時間以上の労働をしても、割増率は1.35倍のままです。
深夜労働の計算方法
残業や法定休日労働とは別に、深夜に働く労働者には割増賃金が発生します。この「深夜労働」に該当するのは、22:00〜5:00の範囲です。深夜労働は25%増しで計算されなければなりません。
たとえば、時給1,000円の方が22:00〜2:00までの4時間の労働をした場合、その日の労働賃金は(1,000円✖️1.25✖️4)という計算方法で出します。
深夜労働を計算する際の注意点
深夜労働かつ残業、または深夜労働かつ休日出勤というケースも考えられます。この場合は、それぞれの割り増し分が合計されて賃金を計算しなくてはなりません。
深夜労働かつ残業の場合は以下の計算方法で算出します。
「1時間当たりの基礎賃金」✖️1.5
この1.5という数字は、深夜労働の25%と残業代の25%を足したものです。このように、複数の要素が絡む場合は、割り増し分を合計して賃金を算出します。
同じように深夜労働と休日出勤が重なった場合は、以下の計算方法になります。
「1時間当たりの基礎賃金」✖️1.6
この1.6という数字は、深夜労働の25%と休日出勤の35%を足したものです。
みなし残業について
ここまで紹介した給与形態とは異なるのが「みなし残業」を取り入れている企業です。「みなし残業」を取り入れている企業の場合、残業代に関する考え方が大きく異なります。
みなし残業がやや複雑に感じるのは、固定残業代制とみなし労働時間制という2つの形態を持っているからです。以下に、それぞれの特徴をわかりやすく説明します。
固定残業代制
- 固定した残業代が給与に含まれている: 固定残業代制では、あらかじめ1か月あたりの残業時間や労働時間を予測し、それに基づいた固定の残業代を給与に含めて支給します。
- 実際の残業時間に関わらず支給: 実際には残業をしなくても、予め定められた残業代が支給されます。逆に、実際の残業時間が多くても、支給される残業代は変わりません。
- 予測しやすい給与体系: 労働者は収入を予測しやすくなります。
みなし労働時間制
- 労働時間をあらかじめ設定: みなし労働時間制では、あらかじめ1か月あたりの労働時間を設定し、その時間内であれば残業代の支給がない仕組みです。
- 設定した労働時間を超えると残業代発生: 設定された労働時間を超えて働く場合には、その超過分に対して残業代が支給されます。
- 柔軟な働き方に適している: 労働者が柔軟な働き方をする際に、みなし労働時間制は適しています。たとえば、裁量労働制度やテレワークなどが該当します。
簡単に言えば、固定残業代制はあらかじめ残業代を設定して支給する仕組みで、みなし労働時間制はあらかじめ設定した労働時間内で働いた場合には残業代が発生しない仕組みです。
残業代を正確に出すためのツール
勤怠管理システムを企業で導入することで、残業代を含めた給与計算が楽になります。当記事では以下のツールをおすすめしているので、是非ご覧ください。
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まとめ:残業代の支払いは管理者が守らなければならないルール
残業代は労働者の権利であるのと同時に、管理者が守らなければならないルールです。労働者の中には自分で計算しない方もいるかもしれません。しかし、管理者側がずさんでは許されません。残業代を正しく計算し、正当な報酬を労働者に支払う行為こそ、企業が飛躍するための最低条件です。